<ごっちゃんです!東京のご当所力士>麒麟龍(三段目)
大相撲秋場所で、4場所ぶりに転落した三段目で奮闘中なのが東19枚目の麒麟龍(きりんりゅう、22歳)=二所ノ関部屋=だ。両国国技館のある東京都墨田区出身で、まさにご当所中のご当所力士。小学校卒業後に新潟へ出向き、兄弟子の関脇大の里や幕内白熊と同じ中学高校で腕を磨いた直系の後輩でもある。(対比地貴浩)
◆「キリンがシロクマの名で店を予約した」
14日、大相撲秋場所7日目の土俵に上がる麒麟龍
麒麟龍白熊関が今場所初日の前夜、おすし屋さんで決起集会を開いた、というニュースはご存じですか?その中で「キリンがシロクマの名で店を予約した」とありました。その「キリン」が自分です。関取の名を出すとお店に話が通りやすいからですが、笑い話になっちゃいましたね。
二所ノ関部屋では伝統的に、架空を含めた動物をしこ名に取り入れることが多いんです。ただ「麒麟なのか龍なのか、どっちだ」って突っ込まれることもあります。しこ名の由来は、「龍」が出世を願う「昇り龍」から。「麒麟」は…。そういえば、聞いたことありませんでした(笑い)。
◆買い物に来るお相撲さんに囲まれ育つ
【国技館のほか、相撲部屋も多くある墨田区で生まれた。幼少期から力士と日常的に接してきた環境が、相撲を始めるきっかけになった】
土俵上で鋭い視線を送る麒麟龍
麒麟龍母方の祖父母が同じ墨田区で精肉店をやっていたので、お相撲さんが買いに来ることも。だから間近で大きな体を見て、自然とあこがれましたね。相撲は小学4年から墨田区相撲連盟で始めました。当時は自分を含め3人しかいなかったので、三鷹相撲クラブにも参加して、試合もここから出場していました。
【新潟県糸魚川市の能生中、海洋高を経て尾車部屋に入門。師匠だった尾車親方(元大関琴風)の定年に伴う部屋閉鎖のため、2022年2月に現部屋に移籍した】
麒麟龍尾車部屋だと国技館まで電車と徒歩で20分ぐらい。近くて快適でした。それが二所ノ関部屋となると茨城県阿見町にありますので、電車だけでも片道1時間以上に増えました。でも人間って慣れるものですね。もうへっちゃらになりました。
◆師匠の強さにびっくり
【現師匠は元横綱稀勢の里。引退からまだ5年ほどの38歳とあって、師匠が定年間近だった尾車部屋時代には味わえなかった経験ができているという】
麒麟龍部屋は2022年6月に完成したばかり。約1800坪の広大な敷地で、稽古場には土俵が2面もあるなど設備面でも立派です。その中でも驚いたのが、師匠の強さです。
師匠の強さに驚かされたエピソードを明かした麒麟龍
場所前の稽古では、師匠もまわしを締めて関取衆と相撲を取るんです。白熊関が「手が4本ある」って恐れおののくほど、引退したとは思えない馬力とうまさがあるそう。自分ら幕下以下はもう片方の土俵で稽古しているんですが、どうしても目がいっちゃいますよ。さすが横綱です。
【師匠にも部屋にも恵まれ、後は結果を出すだけ。西幕下55枚目だった先場所では2勝5敗で、今年春場所から3場所守った幕下から転落した】
麒麟龍先場所を含め幕下を5場所経験して、勝ち越しは1場所だけ。なるべく早く幕下に戻って、まずはその地位で相撲を取り続けられる地力をつけたいです。師匠には「太れ」と言われています。いま体重は116キロで、130〜140キロには増やしたいですね。中学からずっと親元を離れているので、東京場所を家族はすごく楽しみにしているそうです。ご当所中のご当所力士として、国技館では特に頑張りたいと思います。
<麒麟龍>本名・竹岡勇人(たけおか・はやと)。2001年12月21日。174センチ、116キロ。自己最高位は西幕下39枚目。
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大相撲では「江戸の大関より、故郷(くに)の三段目」と言われます。大阪、名古屋、九州の各場所では、郷土の力士が「ご当所」として特にひいきにされるのは、よく知られたところ。でも、東京では年3回も開かれるのに、力士自身も地元開催という感じがあまりしないとか。そこで東京出身で、かつ普段はなかなかメディアに登場しない幕下以下のお相撲さんを随時、紹介していきます。
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