東京消防庁管内で、救急隊に対して暴行を加えたり、救急車を破損させたりする妨害行為が2019~23年の5年間で96件発生していることが19日、同庁のまとめで分かった。今年も9月17日時点で15件と同水準で推移している。(米田怜央)
19年に15件、20~22年は各20件、23年が21件だった。今年分を合わせた計111件のうち、身体的危害は44件、救急車や聴診器などの物損が45件、暴言などその他が22件に分かれる。
暴れた傷病者を制止した際に破かれた感染防止服
今月上旬には狛江市内で、傷病者を救急車で搬送しようとした際、その家族が救急車への同乗を巡って、救急隊長の顔面を殴り、公務執行妨害の疑いで現行犯逮捕された。隊長は頭に軽傷を負って搬送され、同隊は7時間活動ができなくなった。元々の傷病者は他の隊が駆けつけて搬送した。
今月は杉並区でも救急隊が傷病者の知人から暴行され、活動が2時間止まった。過去には救急車のフロントガラスにひびを入れられたり、聴診器をかみきられたりする事案もあった。
走行中に道具でたたかれて、フロントガラスがひび割れた救急車=いずれも東京消防庁提供
妨害行為が相次ぐ中で、高齢社会の進展や熱中症の増加などが重なり、救急出動件数は高水準が続く。今年は9月17日時点で66万7684件で、過去最多となった昨年の91万8311件を上回るペースとなっている。それぞれの活動時間も長引く傾向にあるという。
同庁担当者は「妨害行為が救急活動の長時間化と搬送の遅延につながり、救急活動がさらに逼迫(ひっぱく)することが危惧(きぐ)される。迅速に現場に向かえるよう、ご理解とご協力をお願いします」と呼びかけた。